タイトルからしてきてます。しかもね、哲学書とか心理学のコーナーで出会ったんですよ。真面目な背表紙が並ぶ中でこの強烈なインパクト。
本屋で見かけたときの期待感といったらもう・・!即買いしましたが本当にお勧めの一冊です。
無人島に漂着するとき持っていたい本ベスト3に入るレベル。
精神科医としての立場から書き記した本、「引き裂かれた自己」によって華々しく(僕の前に)現れたR・D・レイン。通称レイン様です。
引き裂かれたーのほうは、副題に実存的研究なんて言葉があるように、医学者としての立場を明確して対象から距離を置いて観察している感じがしますが、
この本に至っては、色とりどりの水の中にドボーーーンと潜って、水面越しに見た世界を描写している、といったところなんですよ。
詩のような形態ではありますが、前出の著作によりそれは飽くまでも、その形態を選択しただけであるように思います。
もくじですらこうです!
16君の声が聞こえないんだ
17むつかしいもんだな
18やめて こんなこと
19どれもこれもみんなどこから来たのかしら?
・・・それではこの中から、「やめて こんなこと」をご紹介いたしましょう。
彼女 やめて こんなこと
彼 きみこそ やめろよ こんなこと
彼女 してもいないことをやめるなんて できないわよ
彼 きみがはじめたんだぜ こんなこと
彼女 そしてあなたこそ やめてよ こんなこと
彼 してもいないことをやめるなんて できないよ
彼女 そういうことをぬけぬけとやってのけようと思っているのね あなたは
彼 ぬけぬけとやってのけるって なにをさ?
彼女 こんどこそ のたくって逃げだすわけにはいかなくてよ
彼 のたくって逃げるって なにからさ?
彼女 ばかのまねしてごまかしたりしないで
彼 そんなことなんか なにもしてはいないよ
彼女 おしまいにして こんなこと
彼 はじめからやっていないよ
彼女 打ち切りにして
彼 打ち切るって なにをさ
彼女 やめてくださらない こんなこと?
彼 やめるって なにをさ
彼女 あれよ
彼 なにさ?
彼女 なにもかもちゃんと知ってるくせに
彼 どうやらぼくは知らないんじゃないかなあ
彼女 どうやら私は知らないんじゃないかしら
彼 もう眠ることにするよ
彼女 あなたは一度だって目がさめたことがないのよ
と、こんな調子で掴めそうでつかめない、なんとも表し難い言葉が並んでいるのです。
あるとき某作家さんが風に揺れるレースのカーテンが描かれた自作を前に言っていました。
「なぜこれを描いたのかというと、ただこんな気持ちだったからだ」
作品の良し悪しはさておき、なるほどこんな気持ちを伝えたかったのかぁ・・と変に関心しました。
目の前にある作品が直接的に、具体的に何かのメッセージであって欲しいという欲求を無意識に持っていたんですよね。
なんだか、こんな気分。その気持ちそのままを表してみて、受け取ってみる。そういう方法もあるんだなあと思ったものです。
レイン様の文章も、そんな感じで受け入れるものなのかも知れません。
ちなみに結ぼれという本も出版されていますが、よりハードに突き進んでいます。だんぜんこちらのほうが面白いです!
タイトルにもなっている好き?好き?大好き?はもちろん、寓話という作品も素晴らしい。ぜひ一度読んでみてください。未知なる世界が待っていますよ・・
好き? 好き? 大好き?